20200711 熊井泰明

 

なぜか家に帰れない男の話―「実は、宇宙人と出会ってしまった」―

 

 

 

 今から4,000年ほど前のことです。トロイ戦争に勝利した英雄オデュッセウスが祖国へ帰還しようとすると、個人的な恨みを持つ神々(!)に邪魔をされ、ついに帰還するまで10年を要した、というオデュッセイア(一般には「長い旅」という意味でつかわれる)という長編叙事詩があります。化け物や魔女たちが襲いかかる一方、必ず誰かが助けてくれて(有名なのはナウシカ姫)冒険を繰り返すのですが、これが自宅に近づくと嵐になってまた遠くへ飛ばされてしまう、いつまでも家に帰れない、というなかなか魅力的な話です。

 

 この話のもう一人の主人公は妻のペネロペで、こちらは夫が死んだと伝えられて40人の男たちから言い寄られるのですが、最後まで夫の無事を信じ続け機織りを続けます。さらに、息子は父親を探す旅に出るという家族の物語でもあります。

 

 ここで面白いのは、戦争に出る夫、家を守る妻、その間で自分の役割を探す子供という役割分担がすでに出来ていること。ただ、夫は戦争に出た以外の話はあまりあてになりません。歌声で人を惑わす魔女、盗み食いをした家来を豚に変える魔術師、6本の頭を持つ竜など、毎度おなじみの連中が襲いかかりますが、もちろん話としては良く出来ています。「あなた、どこに行ってたの!」「実はね…宇宙人と出会ってしまった」という類です。

 

 なお、同じ話は室町時代以降の日本でも「百合若大臣」として浄瑠璃などにも登場しており、このネタは普遍性もあるようです。なぜ、4,000年も男女の役割は固定化されているのでしょうか。多分、役割を分担したほうが生産性は高いと信じられてきたからだと思います。(熊井)

 

確かに今も、片町に行って、「知り合いにばったり会って、遅くなった」という言い訳が多い(大砂)