202020624 熊井泰明

 

イクメンになったジェームズ・ボンド

 

 

 

衝撃の新作

 

 あまり映画に興味のない方でも、ジェームズ・ボンド/007シリーズはご存知でしょう。その新作 “No Time To Die”(原題、11月公開予定)ではボンドは引退してカリブ海で優雅な生活を送っているのですが、なんとそれは娘を育てるためだったという、長年のファンには衝撃的な内容であることが分かりました。

 

 ボンドは20世紀を代表する存在です。小説の背景は東西対立ですが、映画では旧ソ連を悪役には出来ません。そこで、最新テクノロジーを駆使する巨大な悪の組織を設定しました。ボンド映画の性格付けを一言で言えば「古き良き時代のマッチョイズム」。車と酒と女性が彼の引き立て役です。ところが、さすがに現代ではこれは通用しない。そこで上司を女性にするなど悪あがきをして来ました。次のボンドは女性、という噂もありました。それが、イクメンパパというまさかの展開になりました。

 

 

 

スパイも仕事と家庭との両立を目指す?

 

 実はボンドは2回ほど結婚歴があります。最初は新婚旅行に出た瞬間に奥さんを射殺され、2回目は元カレの登場で裏切られるという、まあ幸せには縁のない存在です。だいたいMI6(実在する英国秘密情報部)の諜報員に幸せな家庭は似合いません。小説が描かれたのは1960年代ですから、英国でも男性は家庭を顧みることなく働くのが美徳だったのでしょう。そうした背景を持つ映画を21世紀まで続けたことに無理があり、このシリーズはお得意の荒唐無稽路線に転換しました。それが行き着いた先がイクメンパパだったのです。

 

 007がイクメン生活を送る時代です。日本のオジサンたちの、カビが生えたような20世紀型マッチョ追求も大きな転換期に差し掛かっていると思います。