20201017 熊井泰明・大砂雅子

「エール」戦争に見る忠義―日本株式会社の敗北―

 

 今週の「エール」は、つらかったですね。戦争で失われる命を改めて、考えてしまいました。この時期に戦争に向き合わせてくれた「エール」に感謝です。国民一丸となって戦争へ突き進むときに、歌で国民を鼓舞した古関裕而さん。国のための忠義が至るところで出てきました。国を自慢に思い、国を守ることは大切でも、その気持ちを利用して、戦争に駆り立ててはいけません。相手が代わってだけで、会社に忠誠心を誓うという意識が昭和の日本の経済発展を築いたのは皮肉です。忠義や情実やご縁で、会社経営をしてはいけないのです。経営者が正しい判断をできなくなって、日本は途上国への道を進んでいます。(大砂)

 

 最終回が44.1%という視聴率をたたき出した「半沢直樹」。販売部数6,800万部の「キングダム」。間管理職層を中心に広範な年齢層に熱狂的なファンを集めている印象があります。

 私はほとんどつまみ食い状態なので人気の理由が良く分からなかったのですが、両方に共通しているのはあまりに濃厚な人間関係だと思います。歌舞伎や水戸黄門シリーズと同じ、情けが支配する物語。一方は銀行経営、もう一方は国家統一という目的や論理で展開する世界、のはずですが、もっぱら誰と彼が出会ってどういう関係を結ぶ、という点に主眼が置かれています。それが、日本人には、大変心地よいのでしょう。

 日本の会社組織、というよりは日本の社会が、そうした情実で成立して来たと思います。戦争ですら「顔を立てる」という理由で不合理な決定が下された例には事欠かず、それが大敗を招いて多くの犠牲者を出しても責任を問われない組織を生み出して来ました。その軍隊を模倣した日本株式会社も、合理的であるよりは情実優先で動いてきました。会社の命令には服従し、同質を目指す男たちが深夜まで意味のない宴会を続ける文化は、こうした情実社会と裏表の関係にあると思います。合理的だと個人の知力や実力が問われる。情実なら、無能でも生きていけます。生き続ければ年功序列でそれなりの地位が与えられる。

 両作品をみると、なぜ日本の国際競争力や地位が落ち続けるのかがうかがい知れます。世界で問われているのは理念、戦略、評価、革新なのに、人間関係と「みんな頑張ったんだから」で済ませるこの国が置いて行かれるのは、ある意味、当然でしょう。

 女性の皆さん、そんなガタが来た日本の男社会に巻き込まれないようにご注意下さい。(熊井)