20200414 熊井泰明

 

「ペスト」と新型コロナ

 

 

 

 アルベール・カミュの「ペスト」が今年だけで15万部、累計100万部のベストセラーになったそうです。ペストの流行で閉鎖、隔離された地中海を臨む都市で生き、死んでいく人々の話ですが、ひとつひとつの言葉が重い難解な小説だと思います。

 

 新型コロナウイルスの拡散に伴い、過去の小説や映画が注目されています。日本で話題になったのはアニメの名作「AKIRA」ですが、いろいろ記憶をたどってみるとパンデミック(感染症の世界的拡大)映画は隔離と並行して特効薬を開発するという、だいたい同じような展開をたどります。今回の新型コロナウイルスをめぐる展開に既視感があるのは、つまりパンデミックへの対応は昔からあまり変わっていないということでしょうか。

 

 「ペスト」はいろいろな読み方が出来ますが、人類は繰り返し不条理と向き合わなければならない、ということでしょうか。金融市場には「The This-Time-is-Different Syndrome」(今度は違う症候群)という言葉があります。何か特別なことが起こっているように見えても、歴史を統計的にたどると同じような現象が繰り返しているだけ、という考え方です。今回も王道はありません。

 

ただ、不安なのは政府の対応が「あまりに遅く、あまりに少ない」症候群から抜け出せない。「国民を守る、まずは拡散を食い止める」という目的からはずれ、日本病とでもいうべき「あれもこれも症候群」にかかっていること。これも75年前の悲劇と変わりません。