20200708井泰明

 

何が平家を滅ぼしたか―今は革新と多様性を忘れた地縁社会か―

 

 

 

 平家というと「おごれるもの久しからず」というフレーズが浮かびますが、何が平家をほろぼしたのでしょうか。改めて読んでみて気付いたのは、平家が血縁で結ばれているのに対し、源氏は地縁で結ばれていること。日本で最も正統とされる血縁は皇室ですが、平清盛は娘を皇室に嫁がせて天皇家と血縁を結ぶに至ります。

 

 血縁社会である以上、女性の役割が極めて重要になります。平家物語には建礼門院をはじめ、権力闘争に翻弄される女性たちが登場します。しかし、源氏には北条政子以外に積極的な役割を果たす女性がいません。そして平家の滅亡とともに、日本女性の姿が消えたように思います。それはそうでしょう。以後数百年にわたって日本は内戦状態に入り、軍人としての男性が主役になりますから。その後、例えば徳川家は血縁ですが、女性はほぼ遺伝子を残すための道具としてしか扱われません。その流れは明治を経て現在に至るまで続いているように思います。

 

 本来なら、源氏が勝利した要因のひとつが革新と多様化(ダイバーシティ)とも言える訳ですが、革新は続けないと陳腐になり、多様化はそれ自体に混乱という遺伝子をはらんでいます。さらに不幸なことには、75年前からの経済成長が軍事モデルを追求し、そのなかで革新と多様化を忘れた会社という地縁組織が中核を成したことだと思います。

 

 血縁が良いとは言いません。その延長上には優性思想や排他主義があります。しかし、地縁もまた別の排他主義を招きます。そろそろ第三の道を探さないと「久しからず」は私たちの運命になりかねません。