20190620 大砂雅子

 

「妻のトリセツ」はなぜ売れるか?

 

 

 

「妻のトリセツ」(作者:黒川伊保子)を読みました。「『妻が怖い』という夫が増えている。」から始まります。2017年度の夫側からの離婚申し立て理由の2位に「妻からの虐待」とあります。妻が、キレる。無視する。人格を否定する発言をする等々。この原因は、過去の記憶を呼び戻して「理不尽な不機嫌」を増幅して表す女性脳にあるらしい。女性の立場からするとアルアル感たっぷりですが、男性の熊井教授から見ると、男女の脳には変わりはないとバッサリ。さらに男性の友人たちに「夫のトリセツ」は売れるか?とインタビューしたところ、「そんなもの売れるわけがない。なぜなら、今更、夫に尽くしたいという熟年の妻はいない。」とのこと。

 

作者は人工知能研究者であって、脳科学者ではないようです。男女の脳に違いがないというのが、脳科学としては主流のようですが、なぜここまでこの本が売れるのか?私も、妻の扱いに困っている男性に、読むように勧めています。私の世代は、ほぼ男性が外で稼ぎ、女性が家事育児をするという役割分担が確立しており、その年代の男性たちには男女の役割分担=男性脳・女性脳の違いなのでしょう。

 

この本では、男性脳は、「空間認識能力が高く。ものの位置関係に敏感な男性脳。」「世界経済を語りながら宇宙に想いを馳せるのが男性脳」とあり、女性脳は、子供を危険から守る母性により、周囲のことをなめるように見回すようです。世界経済をチェックし、「グローバル人材とは?」など、講義をしている私は、男女の脳を超越してしまったのでしょうか?

 

かつて、育児と家事と仕事でてんてこ舞いしている私が、風邪でダウンしているときに、「僕はいいから、外で何か食べてくるよ」と言った夫に、殺意さえ覚えましたが、夫の関心は宇宙どころか自分のお腹しかなかったのです。さらに毎日電車の中でも走って帰っていた(乗る車両によって乗り継ぎが遅れる)私に近所のおばさんが、月に一度だけ子供を迎えに行き、ファミレスに食事に連れて行った夫に「いい旦那さんだね」という時代だったのです。

 

本題の「なぜ売れるか?」に戻りましょう。つまり、夫たちは妻がなぜここまでキレてしまったのか?理解できない。男女の役割分担をこなし、一所懸命に稼いで、家族を養いはしたが、家庭に向き合ってこなかったつけが回ってきたことがわからずに、定年を迎え、コミュニケーションをとらなくても、「やっておけよ」で、よかった会社の常識をそのまま家に持ち帰ってしまったのではないでしょうか?

 

 多様性が叫ばれていますが、日本人男性中心の均一化した社会構造は、一番多様性とは程遠い。さらにこれがそのまま高齢化に突入してしまいました。まずは、男女の脳が違うのではなく、人間は個体差であるという事実を認識し、妻を含む他者の価値観を尊重することから始めましょう。多様性とは、言わないことはわからない他人と付き合うことなのです。

 

オジサンたち、今日からでも遅くないです。