20191212 熊井泰明

 

寡婦控除は差別か―なぜフランスでは出生率が高い―

 

 

 

 合計特殊出生率という数字があります。1人の女性が一生の間に出産する子供の数です。単純に考えて、これが2以上なら人口はほぼ増減なく保たれることになります。ご存知かも知れませんが、現在の日本は1.432017年)です。政策的には1.7まで上昇させたいようですが、まず難しいでしょう。

 

 出生率が高い国はアフリカに多いのですが、これらの国では乳幼児死亡率も高い傾向にあります。そこで、比較的経済面で恵まれた国をみると、フランス(1.92)、スウェーデン(1.85)、アイルランド(1.81)など欧州の国が目立ちます。どんな特徴があるでしょうか。

 

婚外子、つまり何らかの形でパートナーはいるが、結婚せずに母親となっている人の割合が高いのです。ちなみにフランスは59.7%、スウェーデン54.9%、アイルランド36.6%で、OECD加盟国36の平均は39.7%。10人の子供のうち4人は結婚していないカップルの子供です。一番平均に近いのは米国の39.8%。日本はどうか。2.3%で、1.9%の韓国に次ぐブービーです。

 

 日本と韓国に共通で、その他の国にないものは何でしょうか。それは戸籍制度です。韓国は日本の統治下で導入されていますから、事実上、戸籍制度は日本の専売と考えて良いと思います。ドイツ、中国、台湾などには住民登録のような形はありますが、親族関係を明記した戸籍は日本と韓国にしかありません。皮肉なことに、濃厚な血縁による家族制度が極端な少子化を招いているのではないか、というのが私の仮説です。

 

 私の周囲に、パートナーと生活を共にしているが結婚する気はない、という人が女性を中心に目立ちます。別に個人の人生に踏み込むつもりはないのですが、彼女たちが問わず語りに語る言葉はほぼ共通しています。「彼は好きです。でも彼の家族とは家族になりたくありません」結婚という選択をすると親族が増え、その結果自分の人生に細々と踏み込まれる。中には、「結婚したら、もれなく介護が付いてきます。家事、育児だけでも考えるだけでうんざりするのに」という人もいました。

 

 こんなことに思い至ったのは、「寡婦控除」をめぐる議論です。寡婦とは「夫と死別または離婚」した女性のこと。つまり、一度は法律上の結婚が条件です。税制に寡婦控除という制度があります。私もFPの資格を持ちながら、なぜこんな問題に気が付かなかったか。「寡婦」ですから、戸籍上、結婚したことが前提です。結婚せずに子供を持った場合には、所得税で35万円の控除が受けられず、新たに始まる給付型奨学金最大161万円が受けられません。その他にも不都合が山積みになっています。あなたはこれを当然と思いますか。

 

 現在の日本の制度は「健全な家族制度」に従わない人間は対象になりません。憲法のもとでは、全ての日本人が公平な権利を認められています。育児も介護も社会で支えるべきではありませんか。それともたかだか70年の歴史しかないイエ制度にからめとられて滅亡の道を選ぶおつもりですか。そろそろ決めて下さい。