20191218 熊井泰明・大砂雅子

 

121ショック―ジェンダー・ギャップ指数後退と「公平」意識-

 

 

 

ダボス会議を主催する世界経済フォーラム(WEF)が2019年版ジェンダー・ギャップ指数を発表しました。日本は153か国中、昨年の110位から121位に後退、先進国のなかでは最低でした。この指数は、経済、教育、健康、政治の4分野14項目のデータについて指数化したものを比較しています。昨年と比較すると、経済と健康は若干改善したものの、政治と教育が順位を落としています。ただ、教育と健康は他の国のスコアも高いため、少しでも教育でスコアを落とすと順位も後退します。まあ、110位も121位もあまり大きな差ではなく、ともかく日本はジャンダー・ギャップがひどい国、という事実は隠せません。

 

 先日、フィンランドで34歳の女性首相が誕生したことが、日本で話題になりました。「日本で」と加えたのは、駐日フィンランド大使館が「確かに世界で最も若い首相だが、別に驚くようなことでは」と表明したからです。現在、世界で女性大統領が7人、首相が5人ですから少ないとはいえるものの、女性であることは注目に値することではないでしょう。このニュースが昨夜テレビやネットで流れましたが、新聞の取り扱いはわずかですし、毎年のことで、「日本は日本だ」と思っているオジサン・オバサンが多いと感じます。

 

 特にギャップが大きいのは政治の意思決定に係る分野です。各国の下院(日本では衆議院)の女性議員比率平均は25.2%、女性閣僚比率は21.2%です。これが日本では10.1%、13.0%ですから、確かに少ないです。現在表に立っている女性政治家は男社会をすり抜ける術に長けた人だけではないでしょうか。また、経済では収入格差(108位)、管理職数(131位)、専門職・技術職(110位)などが目立ちます。つまり、女性であるというだけで正当に評価しない国という事実が明確に表れていると言えるでしょう。

 

  政治でも経済分野でも、意思決定に女性が参加しないということが何を引き起こしているか?社会の構成員も市場も半分は女性が占めています。たとえば幼保無償化を実現したものの、施設を増やし保育士の待遇改善をしないために、待機児童の数が減ったわけではないです。今年の出生率は87万人という史上最低、少子化に拍車がかかっています。この愚策は現場を知らない男性政治家が進めました。

 

 企業経営の場では、効率性や智恵がありかつ消費者である女性が、意思決定に参加できずに、市場が求めている商品やサービスを逃しているかもしれません。働き方改革で、月に1日だけの育児をした男性をほめる。女性だけでミーティングをするなどで、女性活躍に貢献したと男性企業幹部が自慢することに遭遇するとめまいを感じます。

 

 もうこの国が限界を超えるまでこの問題を取り上げてもムダだと思うこともありますが、気を取り直して考えてみることに。この国では毎日1,000人以上の人口が減少しています。そのなかで、人的資源を使いこなせないということは、将来にわたりこの国に壊滅的な打撃を与え続けます。これを女性だけの問題と捉えると判断を誤ります。氷河期世代のために600億円の予算を用意するとの話がありますが、問題は年代や時期ではありません。根本的な問題は21世紀に入ってから日本は人を安く使うことしか考えなくなったことにあります。典型的には非正規労働者が4割近くを占めるまで正規労働者を減らしたことです。

 

 さらに、経営者たちは「終身雇用は無理」と公然と口にしており、おそらく今後現在の40代、50代が大量整理にさらされることになります。お気づきですか。性別で区別することも、年齢で区別することも本質的には変わりません。経営者だけでなく有権者もその人の能力や資質を評価する力と意思がないため、本人の努力ではどうすることも出来ない属性で決めてしまうのです。これをこの国では「公平」と呼びます。

 

 この国には「差別」はなく「公平」がある。のかと再度問いたいと思います。