2019.6.1熊井泰明

 

RBG―男の不安との闘い―

 

 

 

このタイトルが何か分かる方は、これ以上読んで頂く必要はないかも知れません。RBGとは、86歳で現役最高齢の米国最高裁判事、ルイス・ベーダー・ギンズバーグのことです。3文字で誰か分かる、ということは米国では最大の敬意を集めていると言ってよいでしょう。例えば、FDR(ルーズベルト大統領)、JFK(ケネディ大統領)、MLK(キング牧師)です。

 

映画になった「伝説」

 

最近、彼女に関する映画2本が公開されました。1本は「ビリーブ」(原題“On the Basis of Sex”)、もう1本は、現在全国で公開されている「RGB」です。(注:石川県では上映館なし)後者は完全なドキュメンタリーですが、前者は若き日々の活躍を描いたもので、家族の物語としても秀逸な仕上がりでした。

 

米国の法体系を覆す

 

RBGは、1956年にハーバード法科大学院に500人中たった9人の女性として入学します。その入学パーティーで学長から「君たちは男子学生の席を奪って入学した。その理由を言いなさい」という屈辱を受けます。さらに移籍したコロンビア大学を首席で卒業しても、女性という理由で仕事に就けず、大学で教鞭をとることになります。そして1970年代、「女性が介護した費用は税控除の対象なのに、男性が介護をした場合は対象外」という税法を、誰もが不可能と口をそろえるなかで、違法として勝訴を勝ち取り、これが男女平等原則という米国の法体系を全て変えさせる契機になっていきます。

 

家族の物語として

 

というと、スーパーウーマンの伝説のようですが、それだけで広く尊敬を集めることは難しい。実は、彼女は学生結婚をして、ハーバード入学時には2歳の娘がいました。ああ、やはりスーパーウーマンか、と思わないでください。成功した理由は、やはり弁護士である夫が、法律事務所パートナーへの誘いを断って、弁護士としてさらに家庭人として彼女を支えたからでした。彼は彼女に自分以上に強い意志と能力を認め、それを支えることを選択したのです。

 

男たちよ、もう他人の邪魔はやめよう

 

もうひとつ、彼女が就職面接をした法律事務所での弁護士の言葉が印象的です。「あなたが優秀で、大きな成果を上げることは分かる。でも、男たちがそれに嫉妬することも目に見えている」若いから、外国人だから、そして女性だから、という属性をあげつらって本人の努力や才能を否定する言葉の裏には、嫉妬と、自分の席を奪われるであろう男たちの不安と懸念が渦巻いているように思います。

 

 

 

熊井泰明