20190604 熊井泰明

 

VUCAの時代にロールモデルは必要か

 

 

 

 女性活躍という言葉が出るとき、よく女性たちから「ロールモデルがない」ということを聞きます。1985年に男女雇用機会均等法が成立しました。ところが、いわゆる均等法第一世代は比較的早い時期に退職してしまうという誤算がありました。理由は簡単で、「女性も男性と同じように働く」ことが前提だからです。その背景には、日本企業が、野口悠紀雄氏が指摘するように、戦時体制を引きずっていることがあるように思います。男は戦場へ、女は家庭に、というわけです。

 

 例えば、均等法には雇用差別の禁止と並んで、「女性労働者の就業に関して妊娠中及び出産後の健康の確保を図る等の措置を推進することを目的とする」(第1条)ことが示されています。つまり、男のように働き、同じ条件の下で結婚生活と母親の役割も果たせ、というのがこの法律の趣旨だったのです。悪名高いワンオペより始末が悪い。女は戦場に出ながら家庭を守れ、と言われても。

 

 どうも私たちは、答えは一つ、という思い込みを刷り込まれているように思います。学生たちと話をしていると「で、どう答えたら点数がもらえるのですか」という声を聞きます。しかし、現実には答えがないことのほうが多い。最近の言葉にVCUAがあります。なんとも発音しにくい言葉ですが、Volatility(変動性)、Uncertainty(不安定性)、 Complexity(複雑性)、 Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取ったものです。

 

これまでの日本のエリートとは、唯一の正解にたどり着く能力の高い人間だと言って良いでしょう。ところが、現代は正解のない時代です。正確には、正解が形を変え、手をすり抜けていく。ゴールのはずが蜃気楼、ということもあるかも知れません。そういう時代にはどうしたら良いのか。

 

ここからは皆さんのご意見を頂ければと思いますが、まず私見を紹介しておきます。極めて真っ当な考え方で行けば、現存する海図によって概観し、レーダーとコンパスで常に状況を注視する。そして、だめなら安全領域まで引き返す。これを繰り返すことでしょうか。もうひとつは、客観的で異なる見解を持つ第三者のネットワークだと思います。同質なものだけではどうしようもない。

 

実は、日本のイケてない男たちには、変化ほど恐ろしいものはありません。だから、考えることを放棄し、同質性のなかにつかり、学ばず目を閉じる。どうも経済界も政界もそんな男たちであふれているようで、これが一番の危機なのではないか、と思うことしきりです。

 

 

 

熊井泰明