-ガネーシャの憂鬱―20190609

 

失うことには耐えられない…行動経済学入門

 

 

 

 恋は成就した時の喜びよりも失ったときの悲しみのほうが大きい。(例外あり)ダニエル・カーネマンという人がこれを理論化して、ノーベル経済学賞を受け取りました。詳しくは「プロスペクト理論」を検索してもらえば、かなり詳細な説明が多数あります。要は、人は得られた満足感より失った喪失感を大きく感じる、ということで、もっと簡単に言えば、100円の得で得られる満足より100円の損のダメージが大きい、ということです。

 

 意外と気付いている人は少ないのですが、経済学の基本は人の満足感という心理現象にあります。例えば、砂漠の果てで飲む1杯の水はまさに甘露です。では2杯目は?少し満足感が下がる。10杯目なら?もういらない、ということになるかも知れません。これを限界理論あるいは限界効用逓減法則(漢字が難しいのでここで経済学にくじける人が多い)といい、ミクロ経済学の基本です。(モデルですから個人差は考えません)

 

「最初のキスは魔法だ。2回目は当然になる。3回目になったら、服を脱がすタイミングしか考えなくなる」 

 

レイモンド・チャンドラー「ロング・グッドバイ」より

 

 失う、あるいは損失を避けようとすれば、今起こっていることが明日も続くことを選択するようになります。これを「正常性バイアス」と言います。

 

「今日の話は昨日の続き、今日の続きはまた明日」  TBSラジオ「永六輔の誰かとどこかで」

 

 ところがここで大きな矛盾に向き合うことになります。人は今月の給与だけで支出を決める訳ではありません。(そういう人もいますが)生涯の収入と支出を考えながら、生活を設計する。していない?しましょうよ。政府が「100歳まで生きたら2,000万円足りない」と言い出したのですから。これをM.フリードマンの「恒常所得仮説」と言います。

 

 でも、将来のことは分からない。とすると、何らかの予測を立てなければなりません。昔は年と共に給料は増え、退職金も結構もらえました。厚労省によると、1997年の退職金の平均(大卒サラリーマン)2,868万円でした。ところが、この年をピークに減少し、2017年は1,788万円です。国税庁によると、1997年の平均年収は467万円、2014年は415万円。(非正規労働の影響あり)これが税金や社会保険料を控除した可処分所得(手取り)となると、同じ期間に25%ほど減ったという試算があります。あなたが「なんだか生活に余裕がなくなった」と感じているなら、その正体は手取り給与の減少が一因です。

 

 ところが、多くの日本人は薄々真相に気付いているのに、悪いことは考えたくない。明日も今日と同じであってくれ、と目を閉じて祈っている人のなんと多いことか。今からでも遅くはありません。しっかりとこれからのお金のことを考えましょう。

 

参考:給与については「年収ラボ」というページに良くまとまっています。ついでに、業種別、性別などいろいろなデータが分かりやすく解説されています。同じ仕事の男女賃金差には、多分怒りしか感じないと思います。https://nensyu-labo.com/

 

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