―ガネーシャの憂鬱― 20191016 

 

金融講座番外編:「エバンゲリオンとトランプの複雑な関係」

 

 

 

質問です。米国民で科学を信用していない人の割合は次のどれに一番近いと考えられていますか。①23人に1人、②45人に1人、③123人に1人、④約30人に1人。答は②です。

 

米国の調査機関ピュー・リサーチセンターの2015年調査では、進化により人類が現在の姿になった、いわゆる「進化論」を信用する米国人は10人中6人。残りの4人は、神がこの姿の人類を創造した、と考えているそうです。先ほどの45人に1人、というのは、キリスト教福音派の割合です。(統計によっては3人に1人に近い例もあり)福音派とは、中にはもう少し寛容な派閥もあるようですが、聖書に述べられていることのみが真実とするキリスト教徒の人々のこと。主張には、進化論拒否、妊娠中絶反対、同性愛否定、などの特徴があります。これを全て具現化しているのがトランプ大統領です。

 

例えば、米国は環境問題に関するパリ合意から離脱しました。福音派の主張によれば、環境悪化や温暖化は神の意思であり、これに逆らうことは信仰に反するのだそうです。また、エルサレムをイスラエルの首都に認定して物議を醸しましたが、福音派の主張の中には「選民」であるユダヤ人を尊ぶという教えもあるそうで、これに従ったということのようです。

 

トランプ大統領自身の信仰についてはあまり情報がありません。しかし、ペンス副大統領は福音派であり、ポンペオ国務長官は牧師代行の資格を持つ福音派の重鎮です。福音派が台頭し始めたのは1970年代末。保守系シンクタンクであるヘリテージ財団を中心に、自由が尊重される米国はImmoral(不道徳)な方向に進んでいると考え、伝統的なキリスト教の価値観再生を目指して活動を広げていきました。トランプ勝利の背景には衰退したラストベルト(錆の帯、鉄鋼などの衰退産業の盛んだった地域)の労働者の支持を集めた、と言われることがあります。しかし、それ以上に大きな力となったのが福音派だったと考えられます。投票に行くか分からない労働者に対し、世界の終わりに再臨するイエスにより天国に引き上げられるという「推挙」を信じ、これを実現しようとする宗教的情熱は強固な票田だと考えられます。トランプ大統領の行動が道徳的とは到底思えないのですが、それでも福音派の意図に沿った政策を実現してくれるならそれは問われないのでしょう。トランプ大統領が何をしても岩盤支持層が崩れないのは、福音派の存在があるからと言われています。

 

最近、トランプ大統領は民主党候補を陥れるために海外の政権に圧力をかけたとの疑いから弾劾の声が出ており、支持層にも賛同が広がっています。これに立ち向かうべく福音派が大々的なトランプ指示キャンペーンを始めました。来年の大統領選挙に向けて、混乱する民主党よりも岩盤支持を持つトランプ大統領優位の可能性があるかも知れません。

 

なお、福音派の正式名はEvangelicalで、日本式に読めばエヴァンゲリカルです。彼らの動きを見ながら新約聖書の「ヨハネ黙示録」を見ると、あの複雑なアニメのストーリーを理解するのに役立ちます。余計な話ですがご参考まで。

 

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