―ガネーシャの憂鬱― 20190812 

 

金融講座.10 「海外の年金事情はどうなっているのか」

 

 

 

 日本では基礎年金が毎月5.5万円程度、厚生年金を夫婦で受領すると22万円。それでは毎月5万円足りない、ということが問題になっています。では、海外の各国はどうなっているのでしょうか。安易かも知れませんが、同じような状況の各国と比較してみましょう。多分、「年金は保険」という意味が分かって頂けるかと思います。ということで、今回は給付に絞ってみました。

 

【英国】子供のころ「揺りかごから墓場まで」という言葉で、英国の社会保障のことを知りました。では、この言葉はなぜ出来たのでしょうか。博愛?違います。共産主義への対抗策として出来たものです。北欧の社会保障が充実しているのも同じ理由です。北欧は旧ソ連と隣接しています。その影響力に対抗するには、充実した社会保障制度の確立でした。英国の年金制度は、日本の基礎(国民)年金に似ています。英国は基礎年金(国家年金)だけで支給額は夫婦で週162.35ポンド(約2.4万円)です。

 

【米国】ここで取り上げるのは、社会保障制度(Social Security)によるもので、日本の基礎年金に該当する部分です。かなり複雑なので、残念ながら「平均」では数字を出せません。収入から支払う社会保障税から支出され、基本的には退職前給与の40%程度とされています。ただ、高額所得者に対しては頭打ちになるような計算になっています。ただ、米国ではこれだけでは圧倒的に不足なので、企業年金が主役になります。ここが日本との大きな違いです。ですから失業したり、雇用が不安定だと、年金は大幅に減額されてしまいます。

 

【日本】日本の制度についてあまりご存じでない方もおられるようなので、ここで整理しておきます。日本では、企業の被雇用者は厚生年金、それ以外の人は基礎年金(国民年金)の対象となります。厚生年金には基礎年金と比例報酬部分があるため、40年間加入した場合の国民年金の給付額が平均5.5万円に対し、厚生年金は平均15.5万円です。世間を騒がせている月22万円は、夫の厚生年金+妻の基礎年金です。なお、公務員や教員が加盟していた共済年金は、厚生年金に一本化されました。企業年金の多くは負担に耐え切れずに解散や減額が相次ぎ、現在は確定拠出型(DC)というタイプが主流になっています。

 

 いずれの国も少子高齢化で先行き不安に見舞われていますが、日本の高齢化進行は他国に例をみない速度で進行したため、特に大きな問題を抱えています。「100年安心」という言葉がありますが、これは2004年の年金改革で「マクロ経済スライド」という仕組みを導入したためで、簡単に言えば「払える範囲でしか払わない、だから制度は安泰」という意味で、将来は大幅に給付額が減少する可能性を示しています。

 

 米国の例が顕著ですが、退職後の基本は自助努力、年金は「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(日本国憲法第25条)の支えだけ、と考えたほうが良いと思います。

 

                          ©2019Yasuaki Kumai, All rights reserved