―ガネーシャの憂鬱― 20190817 

 

金融講座.12 退職金なんて出ない、かも?

 

 

 

 退職金って何なのか考えたことがありますか?実は、退職金は給料の後払い分です。昔は会社がいろいろと考えてくれて、「給料として渡してしまうと使っちまうだろ?だから、会社が積み立てておくよ」という訳です。ついでに、こうした性格を反映して退職金に対する税金は、所得税よりかなり低く設定されています。

 

 *20年未満の場合の控除額 40万円×勤続年数

 

  20年超の場合の控除額  800万円+70万円×(勤続年数-20年)

 

  例えば40年勤務なら、800万円+70万円×(40年-20年)=2,200万円まで無税

 

 お気づきのとおり、これは永年勤続を前提にしており、転職するとリセットされてしまう制度です。また、女性の結婚や出産で退職を促すのは、退職金が相当安くて済むからです。これも戦時体制で誕生した制度で、現状では変わって当たり前なのですが、状況が変わったから退職金はなくしてもいいよね、というのが会社の本音でしょう。

 

 ある年齢以上の方にとっては、退職金が出るのが当たり前でした。ところがそういう事情が大きく変わりつつあります。統計的な平均値なので、実態を反映しているかどうか検証する必要はありますが、厚生労働省の統計では、過去20年間に退職金は約1,000万円減少しています。また、お勤めの方はご存知でしょうが、今はポイント制を採用する会社が増えています。これは、成果(というか、端的に言うと最終役職)で金額が決まる方法です。週刊ダイヤモンド(2019722日号)によると、部長とヒラではやはり1,000万円程度の差があるそうです。一方で役員となると、年俸億円レベルという会社も増えています。ところが、今は簡単には役職に就けません。一生ヒラ社員が約8割、というのが現在の平均でしょうか。つまり、退職金はあまり当てになりません。

 

 その変わり、企業は確定拠出型年金(DC)の導入に熱心です。これは会社が一定額を拠出し、それを社員が自分の考え方に沿って積み立て運用していく制度です。この制度のもうひとつのメリットは、転職した場合には自分が運用する資産を次の職場に持って行けることです。転職しても不利になりません。

 

 なお、これまで主流だったのは確定給付型企業年金です。これは将来受け取れる額が決まっていて、そこから逆算した金額を企業が積み立てておく方法です。この方法の欠点は、企業の積立額が増えることで企業の負債が増えてしまうことです。最初、米国企業がこの負担に悲鳴を上げました。1970年代のことです。そこで導入されたのが確定拠出型年金です。

 

 実は米国の企業年金制度はかなり複雑ですが、その基本にERISA (Employee Retirement Income Security Act)という法律があり、これが退職者の所得を保障しています。日本にはこうした法律はなく、かなりあいまいに置かれているのが現状です。社員を大切にしない、という日本企業の特徴がこんなところにも表れています。

 

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