―ガネーシャの憂鬱―20190825

 

金融講座.14「世代間戦争は起こるのか」

 

 

 

 例の「老後2千万円足りない」問題ですが、では現在の高齢者はどうしているのでしょうか。内閣府の資料に「高齢社会白書」というものがあります。この平成28年(2016年)版に驚きの数字がありました。60歳以上の家庭について、「ゆとりがあって全く心配ない」世帯が18.0%、「ゆとりはないがそれほど心配ない」世帯が53.0%、合計71.0%が心配なく老後を過ごしているのです。

 

 年代が上がるにつれて「ゆとりがあって全く心配ない」家庭が増えていることをみると、理由は想像できます。まず、この年代はインフレを経験しており、住宅ローンなど負債が早い時期に完済出来たこと。企業に勤務した人の退職金は、いまより1千万円ほど多かったこと。つい最近まで税制面でも優遇され、手取りが多かったこと。つまり、「団塊の世代」以降に生まれた私たちは、こうした好条件に恵まれることはなく、しかし恵まれた高齢者の社会的費用を負担する必要があります。 

 

 「景気は悪くないはずなのに、なぜか実感がわかない」とはよく言われることですが、その理由ははっきりしています。社会保険料(年金、健康保険、介護保険など)と消費税の負担が大きく増加しているからです。この二つの項目は負担が大きくなることはほぼ確実です。なぜなら、老齢人口はまだ急拡大を続けており、2024年には「団塊の世代」(1947~1949年生まれ、約806万人)が全員75歳以上の後期高齢者になります。その結果、財政は医療費負担に耐え切れなくなる懸念があります。ある統計では、日本人の平均的な生涯医療費は約2,700万円ですが、その50%を75歳以上で使うことになります。2017年度の医療費は約42兆円、うち全人口の16%程度の後期高齢者医療に38%が使われています。その大半は健康保険組合、つまり全世代の勤労者が負担しています。

 

 消費税はどうでしょうか。ご存知のとおり日本の公的債務(借入金等を含む)は約1,200兆円、日本国の年間の稼ぎである国内総生産(GDP)の約2.36倍(2018年度)、世界でも断トツのひどさです。それなのに、なぜ日本が信用されているのか。消費税を欧州各国と同様の2025%にすれば何とかなる、と国際的に考えられている節があるからです。最近、自国通貨建ての公的債務はいくら膨らませても大丈夫、という説が唱えられ、政治家もこれに悪乗りする姿が見られます。歴史的に、巨額の公的債務を放置した国の多くは、ハイパーインフレか信用喪失で経済の大混乱に見舞われています。

 

 では、こうした状況を政治は変えられるでしょうか。これはまず無理です。基本的に政治は、得をしている人に損はさせません。損している人に、もう少し余計に損してもらうことを選択します。よく若者が投票に行けば変わる、という人がいますが、これも期待薄です。仮に20代、30代全員が選挙投票に行ったとしましょう。これでも、それより上の世代の4割の投票率には勝てません。世代間はし烈に争うしかないのでしょうか。

 

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