―ガネーシャの憂鬱― 20190830 

 

金融講座.15「日韓・米中貿易戦争」の結果、想定される最悪の事態は必ず起こる

 

 

 

 良く「エコノミストやアナリストの予想は当たらない」というお叱りを受けます。基本的にこうした職業の人間は「能天気」か「過度の悲観主義者」に分かれます。こうした情報を活用する人々は、双方の意見を聞いて、その中間にある、自分にあった答えを見つけるのです。私は運用に携わっていたため、悲観主義者に近いので、そのつもりでご覧下さい。

 

 韓国に対する貿易制度見直しが議論を呼んでいます。感情論を排せば、別に日本の行動になんら問題はありません。では、この事態がもたらすであろう最悪の結果はなんでしょうか。日本は半導体生産に必要な化学製品などをほぼ独占的に供給しています。韓国にすれば、これまで蛇口をひねれば出ていた半導体材料が、これからはペットボトルで供給します、と言われたようなものです。世界に占める韓国の半導体生産シェアは約20%ですから、少なからぬ産業が影響を受けそうです。また、日本は半導体製造装置の供給国ですから、こうした企業の売上は停滞する懸念があります。

 

 ありとあらゆる産業が半導体を必要としています。スマホやテレビは小型パソコンです。自動車もパソコンで制御されています。さらにAI技術の進歩、5Gというネットの新規格、Windows7のサポート終了に係るパソコン需要、自動運転など、半導体需要は拡大の一途を辿っています。仮に韓国の生産が滞った場合、台湾や中国がそれを補えるか、年内の在庫は確保されているようですが、その後のことは分かりません。さらに、韓国が報復として日本への半導体輸出を止めるようなことがあると、日本の全産業が影響を受ける懸念も残されています。感情論ほど始末の悪いことはないように思います。

 

 米国が中国からの輸入に関税をかけることも、大きな問題です。全世界の家電製品の8割は中国製です。米大統領は完全に誤解していますが、この関税を負担するのは米国民です。中国が「世界の工場」となった今、その流れを止めようとすることは無謀としか言いようがありません。米国はモンロー主義の時代から孤立すればうまく行く、という幻想を持っているようですが、それこそ驕りでしかありません。自国第一主義、地域ブロック経済は、世界大戦の一因になったことを忘れるべきではありません。

 

 政治面でも大きなリスクを抱えています。米国が一方的にINF(中距離核戦力)全廃条約の枠組みを壊し、米、中、ロ、そして北朝鮮までが新たな核兵器開発に熱中しており、世界のパワーバランスが崩壊してしまいました。

 

 こうした状況を、市場はどう評価しているでしょうか。現在、世界で暴落しているのは株式、銅、原油。一方値上がりしているのは、円、先進国国債、そして金(ゴールド)です。米国の株式は一時的に回復するかも知れませんが、短期の動きだと思います。金価格は継続して上昇を続けており、最高値をうかがう状況です。なぜ金が買われるか。最も安全な資産として認識されているからです。今回も予想が外れるよう祈るしかありません。

 

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