―ガネーシャの憂鬱― 20190928 

 

金融講座.20 「経済成長を前提としてはいけない」

 

 

 

 大学生たちと話していると、経済について2つの大きな違和感を覚えることがあります。ひとつは物価が上がるという経験がないこと。実際には授業料も生活必需品もじわじわとインフレにさらされているのですが、なにしろインフレが何か分からない。したがって、物価が上がっていることに気付かない。もうひとつは、経済成長が何か分からない。現時点では就職も転職もほぼほぼ心配はない。これが永遠に続くと思っているようですが、残念、来年度からは相当に様子が変わると思います。

 

 永遠の現状維持が彼らの期待のようですが、その前提となる経済成長について考えてみたいと思います。実は、これが世代によって相当理解が異なります。まず、日本経済がどうであったかを、経済成長率で見てみましょう。1956年度から1973年度までの平均成長率は9.1%でした。現在の中国の成長率が6%から8%ですから、いかに力強かったかお分かりでしょう。ところが石油危機で1974年度から1990年度までの平均成長率は4.2%に落ち、バブルが崩壊した1991年度から2018年度までの平均成長率は1.0%です。日本経済は2回の階段落ちを経験しています。

 

 問題は、これからどうなるか。経済学の考え方では、経済成長に寄与するのは資本と労働の2つの要素しかありません。技術革新という要素は、この2つで説明できない部分に過ぎません。この国にある資本と労働力を全て投入して実現できる経済成長率を、潜在成長率といいます。もうお分かりかと思いますが、人口が減少する状態では経済は成長出来ないのです。経済産業省の推計では、日本の潜在成長率は0.4%、米国の1.9%、ドイツの1.1%と比べても相当低いと言えます。さらに、この相当部分が人口減少で説明されています。

 

 では、日本経済が成長路線に復帰するにはどうしたら良いでしょうか。米国とドイツの例を考えれば、そのヒントが見えて来ます。これらの国は、移民によって人口を維持しています。そもそも米国は移民国家ですし、ドイツは早い時期からトルコなどからの移民に寛容でした。日本経済新聞によると、日本では現在127万人の外国人労働者が働いていますが、これは全就労人口の2%に過ぎません。ただし、移民問題は米国では白人至上主義の台頭にゆれ、ドイツでも社会保障問題などに影を落としています。こうした問題から何を学ぶか、これが今私たちに問われていると言って良いでしょう。

 

 もっとも、日本ではもっと簡単な改善策があります。女性という資産を十分には活用していません。男だ女だという前提を捨て、個人の能力や個性を発揮できる社会を実現すれば、日本はコンパクトながら相当生活しやすい優良国家になることが出来ると思います。しかし、そのためにはまず男が変わる必要があります。わが身に帰ってくることになりますが、男たちはもういい加減に既得権から離れ、女性と若者に道を譲りませんか。そうしないと、この国はもう持ちません。

 

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