―ガネーシャの憂鬱― 20191002 

 

金融講座.22 金融危機前夜―知らないお化けは出てこない―

 

 

 

 子供がまだ幼かった時に見ていたテレビ番組のエンドテーマの中に「知らないお化けは出てこない」という一節があり、深くうなずいてしまったことがあります。鬼であれ河童であれ、誰かがそういうものを書き記したから、私たちはそういうものがいるかも知れないと思うのであって、確かに「知らないお化けは出てこない」のです。

 

 ただ、お化けは出てこないか、というと、そうは言い切れません。私たちが見たこともないお化けがいるかも知れません。現在、金融市場で不思議な現象が起こっています。マイナス金利の債券が飛ぶように売れるのです。少し説明しておくと、債券とは売買可能な借用証書のようなもので、利付と割引の2種類あります。利付とは個人向け国債のように一定期間で一定の金利が支払われるもの。割引とは決められた期間の金利を差し引いて売られるものです。世の中に流通している債券は、この割引債が大部分を占めています。金利を差し引くわけですから、金利が上がれば債券価格は下がります。ではマイナス金利では、市場価格は額面を上回りますから、満期まで持っていれば確実に損をします。1年後に100万円償還される債券が101万円で売られている訳です。これに投資家が殺到しています。

 

 理由その1。もっと高くなるかも知れない。理由その2。ともかく100万円は償還されるのだから安全。1万円は手数料と割り切りましょう。というくらい、金融市場はリスクにおびえています。米中貿易戦争。イラク問題。ウクライナ問題。ブリグジット。中国の台頭。核開発。宇宙戦争。中南米の経済破綻。2016年以降、世界は恐怖におののくようになりました。たった一人の男が表舞台に登場したばかりに。

 

 株式市場は安泰に見えます。確かに米国市場にはそういう一面があります。しかし、低金利とAIに支配されていることも事実です。日本はどうでしょうか。日経平均はそこそこの水準を保っています。ところが、取引量が最低水準に落ち込んでいます。誰も日本株を売買しないのです。それはそうでしょう。日銀と年金基金が全株式の1割近くを保有して、売りも買いもしません。日本の株式市場は葬儀状態なのです。

 

 経済に問題が起こらないよう、政府は財政政策を、日銀は金融政策を発動して微調整します。ところが、政府は借金まみれ、日銀はもう打つ手がありません。仮に日銀のいう2%のインフレが実現したらどうなるでしょうか。(実は生活必需品はすでに大幅に価格上昇しています)金利は物価と並行して動きますから金利も2%に収束します。すると政府は20兆円の金利を追加で払わなければなりません。予算総額100兆円のうち、税収は約60兆円しかありません。さらに金融機関が保有する国債が金利上昇で大幅安になり、その評価損は80兆円と推定されています。この額はそのまま決算に反映されますから、またも金融危機が訪れます。しかも消費税引き上げ。過去、景気後退しなかったことはありません。

 

 最悪のシナリオではありますが、前に広がる暗闇に目を凝らす必要はあると思います。何もなければ、それに越したことはないのですから。

 

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