―ガネーシャの憂鬱― 20191008 

 

金融講座.24 「観光」の意味を考え直す―交流人口増加とは-

 

 

 

 最近のワインショップの充実ぶりには驚くことがあります。ボルドーの高級品から、手ごろな第三世界までほぼ何でも手に入ります。ところが、パリのスーパーで買い求めた安ワインをホテルで開けたら驚愕のうまさでした。確かに「赤道を越えた(フランス)ワインは飲めない」という人もいます。あるいは、フランスの空気のせいか、同時に求めたチーズのせいか、あるいは空気のせいか。多分、そのすべてがその1杯に凝縮されているのでしょう。

 

 流通の発達で、日本各地の水産品などがその日のうちに東京に運ばれたり、翌日には世界各地で楽しめるようになりました。しかし、何か割り切れないものが残ります。

 

 先日、能登門前にあるハイディー・ワイナリーに行ってみました。まだ7年という若いワイナリーですが、何が気になったかというとその展開の仕方です。ワイン醸造は私の専門外なので、美しく美味しいワイン、とだけ言っておきます。そのワインを提供するだけでなく、地元の料理家と組んで素材にこだわった料理と楽しむことを提案してくれます。いわゆる「マリアージュ」です。ここまでならありきたりな試みかも知れません。ところが、訪問したワイナリーで、気になっていたものが何かが分かりました。

 

 まず、併設された瀟洒なレストランで目の前に広がる風景に圧倒されてしまいました。提供される食事のレベルもかなりのものです。残念ながら車だったのでワインは飲めませんでしたが、晴れた昼下がりにここで飲むワインは至福だろうと思ったものです。つまり、総合的な企画力、提案力、発信力があるのです。

 

 交流人口とは、訪問者の数あるいは頻度のことですが、これまでは「観光」という言葉でひとくくりにされていたように思います。昔、「行った、見た、驚いた」というキャッチコピーがありましたが、通過し、ありふれた名物やときに海外産のお土産を購入し、温泉旅館に泊まって次の土地に移動する。しかし、これは通過人口であって交流人口ではないと思います。

 

 農業の付加価値を高めるために「六次産業」という言葉が使われたことがあります。農林水産業が、製造加工、流通を通じて、その掛け算で付加価値を高める、という方法です。これに沿った展開例が、先にご紹介した水産物空輸などの試みなのですが、少子高齢化でそれを支える人がいなくなることまでは織り込んでいなかったように思います。なお、六次産業化法をみると、霞が関文学ですから致し方ないのですが、あまりに沢山の目的を盛り込んだことから「和洋中なんでも食べ放題飲み放題」のような性格になっているような印象です。

 

 定住人口拡大が難しいなら、合わせて交流人口拡大を目指し、そのためにはこれまでにはない企画力、提案力、発信力が必要だと思います。ワイン作りでも日本酒の杜氏でも意欲と才能にあふれる30代が増えて来ました。空輸や新幹線輸送やB級グルメも結構ですが、そうした意欲と力のある若い人を育て、機会を提供することが交流人口を増やし、最終的には地方の問題を改善していく鍵になるように思います。

 

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