―ガネーシャの憂鬱― 20190802

 

金融講座8 年金って、実は保険なのです

 

年金に関する不都合な真実・その1

 

 

 

年金の性格は基本的に保険です。保険とはリスクに対応するためのものです。では、年金はどんなリスクに対応するのでしょうか。それは「長生き」です。

 

1961年、国民年金が導入された時の男性の平均寿命は65.3歳、 女性の平均寿命は70.2歳です。その当時、厚生年金支給は55歳からですから男性は10年間、今と同じく65歳から支給される国民年金は披扶養女性らが5年間程度受給するような前提で作られた制度でした。

 

皆さんの誤解がとんでもなく多い点のひとつに、自分が払った掛金が将来返ってくるという考え方。年金制度発足当初はそうだったのですが、実は1985年に「世代間の助け合い」に大きく舵を切りました。現役世代が高齢者の面倒をみる、という制度です。これは人口増加時代には良い制度でした。多少老後が長くなろうが、支える現役世代はどんどん増えるわけですから。でも、人口減少時代に入ったらどうなりますか?

 

でも、この当時から「人口減少時代が来る」という警報を鳴らしていた人々がいました。理由は簡単で、統計をみれば出生数は確実に減少している。でも、政府は、「いや、そんなことは一時的で、人口はまた増加に転じる」と言い張っていました。しかし、結果として人口は明らかに減少に転じました。1985年に政策担当者が現実を見てさえいれば、現在のような混乱は避けられていたかも知れません。

 

現状を考えてみましょう。政府予算は年間約100兆円です。うち、社会保障費が33兆円で、年金と医療費が12兆円ずつ、残りが介護やその他福祉に使われています。残りのうち41兆円が事業予算、26兆円が借金借り換えに使われています。つまり、収入の4分の1は借金の借り換えです。収入のうち、稼ぎ、つまり税収でまかなえるのは55兆円、その他収入が5兆円。残り40兆円が国債という借金です。ところが借り換えが26兆円ですから、毎年14兆円ずつ日本政府の借金は増えています。

 

「マクロ経済スライド」という言葉を聞いたことがありますか。厚労省によれば「そのときの社会情勢(現役人口の減少や平均余命の伸び)に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組み」(厚労省HP)です。つまり、払えなくなったら年金を減らす、という制度です。これなら、年金制度は「100年安心」です。払わなければ良いわけですから。

 

ということで、現在の年金制度は設計を根本的に間違えています。人生100年となるのなら、人生70年かつ子供が黙っていても増える時代の制度は通用しません。つまり、年金制度を現状に即して大きく変更しない限り、年金制度は安心でも国民は安心出来ません。

 

そういう前提で、ではそれに対してどうするか、を考えることにしましょう。

 

 

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