―ガネーシャの憂鬱― 20190809 

 

金融講座9 「そもそもどこから年金はおかしくなったのか」

 

年金に関する不都合な真実・その2

 

 

 

 日本の年金制度が行き詰まってきた原因には、いくつもの「想定外」がありました。ただ、「想定外」が起こることは事前に分かっていた(?!)ことで、政府を含め誰もが口を閉ざしていただけです。それを掲げておきましょう。

 

1)年金はあくまで保険であることを知らせなかった

 

 つまり、基本は自助で、年金は無収入に備えた保険です。ところが、「年金で老後は安泰」と思う人も多く、また政府もそのように誘導してきた傾向があります。

 

2)すべてが「昭和モデル」を引きずっている

 

野口悠紀雄氏は、これを「1940年体制」1と分析しましたが、1990年以降のバブル崩壊後、会社が社会福祉を担い、個人は家族に依存する、というシステムは制度疲労を起こして壊れてしまいました。会社にはもうそんな余力はありませんし、家庭中心の社会も維持が出来なくなっています。企業年金が次々と確定拠出型2になったのが、その証拠です。

 

3)人口減少、少子高齢化なんて「想定外」?!

 

将来の予測で、人口動態ほど確かなものはありません。今日生まれた子供は20年経たなければ成人にはなりませんし、今日50歳の人は20年後確実に70歳になります。だから、誰の目にも日本の人口減少は明らかでした。2020年には日本人女性の半数が50歳以上になる、つまり物理的に妊娠出産することが難しくなる、2024年には全人口の3人に1人以上が65歳以上の高齢者になることが分かっています。3分かっていながら、年金制度は人口増加、経済成長という「昭和モデル」で作られています。

 

現在のモデルは、「ほぼ全員が結婚し、夫は仕事、妻は家事・育児・介護、3世代同居」という前提で作られています。年金が保険だとしたら、主たる収入はどうするのか。答は、家族が面倒をみる、でした。この考え方がいかに日本人を悩ませていることか。

 

年金問題は、実は日本という国が抱える広範な問題と密接につながっています。生きにくいのは女性だけではありません。男性も3世代を扶養する収入や役割期待にあえいでいます。いくつもの調査で、日本の労働者の自己肯定感や仕事に対する忠誠心は先進国では最低に位置することが示されています。子供の貧困は最悪レベルですし、教育予算は最低レベルです。つまり、年金制度だけいじっても、解決にはほど遠い。私たちはこの国の前提から根本的に変える必要に迫られており、それが手遅れとは思いたくはありません。

 

 *1 野口悠紀雄「1940年体制 さらば戦時経済」2010、東洋経済新報社

 

 *2 企業年金で、将来受け取る年金額が決まっておりそれに合わせて会社負担が増加するものが確定

 

給付型年金、会社負担が決まっており社員が自己責任で運用するものが確定拠出型年金(DC)

 

 *3 河合雅司「未来の年表」2017、講談社現代新書

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