―ガネーシャの憂鬱― 20191124 

 

金融講座29 そもそも政府って何のためにあるの?-財政赤字を考える(Ⅰ)

 

 

 

 あるのが当然と思っている政府ですが、政治や社会という視点とは異なりますが、今回はその役割を経済から考えてみたいと思います。あくまで「経済」ですので念のため。

 

 そもそも、市場が正しく機能するなら、政府は不必要な存在なのです。市場が正しく機能する、というのは提供する人(供給)と必要とする人(需要)が量と価格で折り合うことです。でも、なんとなくうさん臭い話だと思いませんか。

 

 市場は失敗します。つまり、そう簡単にはうまく行きません。経済が想定する「市場の失敗」で政府が介入すべきケースは次の4つです。第1外部不経済と呼ばれるケースです。一番簡単な、しかし深刻な例は公害です。安く良質の製品を作るために廃棄物処理を怠れば、部外者にとっては迷惑このうえありません。これを防ぐための規定を定めるために政府が必要とする考え方です。

 

 第2は、規模の経済あるいは不完全競争です。規模が大きくなればコストは下がり、最初に市場を支配した企業の独り占め、市場の独占になります。競争が起こらなければ、消費者が被害を受けます。そこで、公的な存在である政府が独占を排除します。このため独占禁止法は「経済の憲法」と呼ばれる重要な法律とされています。

 

 第3は、公共財です。橋や道路を誰かが作り、不当な通行料を取ったとしましょう。これでは経済活動は機能しません。そこで、こうした公共財は政府が提供しましょう、という考え方です。

 

 第4のケースは、情報の非対称性、と呼ばれるものです。中古車を買いたいとします。業者はその車の経歴や問題点を知っていますが、買い手はほとんど何も知りません。これをレモン問題と言います。レモンとは、香りは良いのに酸っぱくて食べられない、転じて見た目は良いのに質の悪い中古車のことを言います。医薬品の本当の効果は患者には分かりません。そこで、厳重な検査と管理を義務付けます。こうして非対称性を緩和します。

 

 理論的には以上なのですが、もう少し政治を絡めるとまた違う顔が見えて来ます。それは、公共財の資源配分をどうするか、富む人々と貧しい人々の所得再分配をどうするか、具体的にはどういう基準で税金を集めてそれをどう使うか、さらに景気の安定をどうするか、という3つの観点です。

 

公共財の資源配分とは、限られた予算をどう使うか、橋や道路を優先するか、社会福祉を優先するか、などです。政府は何を優先すべきか。これまで、富の格差が広がることは社会の不安定さを増すと考えられて来ました。ところが、この数十年で持つ者と持たざる者の格差は埋められなくなりました。これで良いのか。最後に、経済政策とは景気を安定させることなのですが、政治が絡むと成長志向になって背伸びをします。政府の「私、失敗しないので」というセリフは信じられるのか。つぎにこれらを考えます。

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