―ガネーシャの憂鬱―20191126 

 

金融講座30 そもそも政府は必要なのか?―財政赤字を考える(Ⅱ)

 

 

 

民主主義国家は、正統な手段で選ばれた人間による政府が機能することが前提と考えられます。では、そこで出来上がった政府は「どこまでやって良い」のかを考えましょう。

 

極端な例を2つ挙げます。まず、「国は警察と消防(と軍隊)があれば良い。それ以上のことはしてくれるな」という考え方があります。これに公正取引委員会を加えれば完璧です。これを夜警国家(Night Watchman State)と言います。簡単に言えば「おれたちはうまくやってるんだから、黙っててくれよな」です。自由主義(laissez faire)とも言われますがこれは極解され、例えば1980年代のレーガノミクスやサッチャリズムなどに引き継がれて「政府からの自由」、具体的には税金を払わないで済ます方向にシフトしました。彼らの主張は「金持ちがもっと金持ちになればお金を使って世の中はもっと豊かになる」です。これをトリクルダウン(trickle-down)効果と言いますが、要はおこぼれ効果です。しかし、金持ちはお金を使わず投機に注ぎ込みました。その結果、金融経済だけが肥大化し、貧しい人はさらに貧しくなったのがこの数十年の出来事です。

 

夜警国家の反対の極にあるのは共産主義ですが、旧ソ連の崩壊でその矛盾をさらしました。力のある者だけが集金する結果になったからです。では中国はどうなるか、注意が必要でしょう。

 

一歩下がって考えた結果は社会民主主義で、北欧、ドイツ、イギリスなどの欧州各国などがこの考え方を採用しています。夜警国家が自己責任社会なら、社会民主主義は高福祉高負担が特徴です。夜警国家はとにかく税負担を嫌います。「あいつらのためになんで俺たちが金を払う必要がある」という訳です。これに対し、社会保障を担う(それだけではありませんが)政府にその存在価値を認め、租税負担によって所得再分配に積極的な地位を与えるのが社会民主主義です。

 

こうなると、中庸に惹かれる日本人は社会民主主義を選択しそうですが、実際は夜警国家に近い現政権を支持しています。このあたりはかなり複雑な問題なので、ここでは社会民主主義の課題を指摘しておきましょう。理想郷のように言われる北欧ですが、実は小規模の経済や人口なので成立した面を無視できません。ある程度の規模を持った英国が、移民や移民、途上国支援の負担を嫌ってEUから離脱しようとしている今となってはさらに深く考える必要があります。世界は理想への負担に耐え切れなくなっています。

 

つまり、自分たちだけがうまくやっていくには国境を閉じる必要がある。世界は矛盾に満ちているが、それには目をつぶろう。だって、国内の問題だけだって大変なんだから。そこで米国はじめ世界中に「あいつらさえいなければ私たちは幸福になれる」と主張する政治家が蔓延する結果になりました。最近、100年前の失敗を私たちは繰り返しているのでは、と思うことがあります。私たちも覚悟を決める必要があるかと思います。

 

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