―ガネーシャの憂鬱―20191202 

 

金融講座32 そもそも財政赤字は悪事なのか―財政赤字を考える(Ⅳ)

 

 

 

 基本的に、政府が赤字ではいけない、ということはありません。例えば、はじめて新幹線を作ったとき、資金は世界銀行からの借金でした。これはきちんと完済しています。

 

 では、新幹線と現状は何が違うのか。新幹線は人の移動を活発にするための投資です。しかし、少子高齢化に対する社会福祉予算は支出です。家に例えるなら、住宅ローンと食費の関係のようなものです。しかし、食費は必要不可欠な支出ですが、ある程度コントロール可能です。ところが内閣府によると、2017年の高齢者(退職後の65歳以上)の割合は27.7%、これが2030年には31.6%になります。この人たちを公的に支援しようとしても、100歳まで生きるなら一人2,000万円足りない、というのが先の調査結果でした。

 

 2019年度の社会保障予算は約33兆円ですが、これは若干眉唾もので、介護保険、健康保険などの収支を詳細に見て行かないと実態は分かりません。私見ですが、社会保障関連にお金がかかる、というのは半分本当、半分は増税プロパガンダだと思っています。それに対する政府見解ですが、これはほとんどポエムかファンタジーなので取り上げません。ここでは財政赤字に限って考えることにします。

 

 まず、「資産は意見、借金は現実」です。「私は時価数億円の山を持っている」と言っても、数億円の現金が手元にある訳ではありません。あくまで幻の評価額です。一方、借金は期日が来たら利息とともに耳をそろえて現金を差し出さなければいけません。実務経験者には常識でも、学者は見落としがち、官僚は目をつぶる傾向にあります。

 

 日本は毎年の赤字を巧みに借り換えでしのいでいます。これはこれで良いのですが、問題は借金は雪だるま式に膨れ上がること。最近、「自国通貨建ての公的債務は限りなく増やせる」という説(MMT)が注目されましたが、これにはいくつかの厳しい条件があります。

 

 仮に日銀が主張する2%インフレが実現したとします。金利は物価に影響されるので、金利は上昇します。仮に1%金利が上昇したら、国の利払いは年間10兆円増加します。年間予算は100兆円ですから支出が1割増えるので、経済が魔法のように成長しない限りは借金がさらに増えます。

 

 もっと深刻なのは、債券価格は金利と逆相関しますから日本国債が暴落することで、国債を保有する日銀から地銀に至るまで、全ての金融機関が巨大な赤字に陥ることです。

 

 改善の方法は、正直、思い当たりません。地道に支出を減らして債務を解消することですが、そうすると財政支出が減って景気は悪化、税収は減ります。

 

日本という国は、巨額の債務を背負い、千尋の谷を綱渡りしているような状態でしょう。借金を抱えるというのは、そういうリスクの綱渡りをすることだと思います。なお、その割には日本国債の格付けは大きくは下がりません。それは、日本には消費税20%という手段が残されているから、というのが金融市場の常識だからです。

©2019Yasuaki Kumai, All rights reserved