―ガネーシャの憂鬱― 20191210 熊井泰明

 

金融講座34 予測なんて当たるはずがないが、AI大明神

 

 

 

 金融機関でアナリストという仕事をしていた当時、若干自虐的に自分たちのことを「クリスタル・ゲイザーズ」と呼んでいたことがあります。水晶占い師、ですね。それぐらい予測なんて信頼に足るものではない、ということです。

 

 そもそも、予測が当たる、ということは、未来のことが見通せる、ということになります。偶然言い当てることはあるかも知れませんが、継続的に未来を見通せるとしたら、それは別の問題になります。結果が分かるなら早いうちにギャンブルに転向したほうが良いです。

 

 そもそも予測とはどんな方法で考えるのでしょうか。それはものごとが直線的に変化するということが前提です。つまり今年5%増加したものは来年も5%±の範囲で変化する、と考えます。実際には、その変化にいろいろな要因が影響を与えますが、これも過去の変化を織り込んで考えます。(これが多変量解析と呼ばれる手法です)

 

 ところが例えばプロスペクト理論という考え方では、利益を得る喜びよりも損失を出す痛手のほうが大きいことを説きます。ならば、人の行動は現状維持にバイアスがかかっていることを考慮しなければなりません。つまり予測が5%でも、その振れ幅は上に小さく、下に大きいことになります。上下対象という前提を置いていたこれまでの予測は使えません。

 

 さらに、それおかしくないか、と思ったあなたは正しいのです。全ての変数は時間と共に変化が小さくなります。人の身長は、0歳から1歳は驚異的な成長を遂げますが、20代になると止まります。会社の寿命も30年と言われ、どんなに成長が期待される企業でも、成功を捨てて変化しないと終わりです。コンピューター製造で世界のトップを走っていたIBMは、大型から小型に移り、最後は全ての生産を捨てて成功しました。

 

 では、エコノミストやアナリストの予測は全くあてにならないのでしょうか。こうした仕事をする人々はBull(強気)からBear(弱気)までがそろっています。強気はいつも強気、弱気はいつも弱気です。そこで運用に携わる人々は、これらの意見を全部並べ、なぜ強気なのか弱気なのか、その見方のポイントを考えて自分の考えをまとめます。答は中間のどこかにあるのです。つまり、問題はどこに注目すべきか、何を見落としているかを確認するために、極端な強気から極端な弱気まで、あらゆる予測が必要になるのです。

 

 個人では、それほど多くの予測や意見を集めることは出来ません。どうすれば良いか。個人的には、自分がもっとも納得できる意見を述べるエコノミストなりアナリストを探すことだと思います。かつてはウォーレン・バフェットという投資家が伝説を作りましたが、現在でもっとも注目を集めるのはジム・ロジャーズかも知れません。ただ、この人は「日本の若者は国を捨てるかマシンガンを用意しろ」というほど暗い見通ししか持っていません。

 

 要は、自分の運用方針、もっと言えば生きる哲学を決めないことには何も役立たないのです。そのうえで納得できるオピニオンリーダーを探さなければなりません。ただ、この分野でもAIが急速に力を伸ばしています。近い将来、AI大明神にはかなわないかも。

 

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