―ガネーシャの憂鬱― 20191227 

 

金融講座:特別編 2020年予測そのⅢ

 

 

 

 今年は世界的に洪水や大規模火災が猛威をふるった1年でした。森林火災が拡大したカリフォルニア州で、数区画だけ火災を免れた地域があります。理由は、私設消防隊が守ったから。戦争請負会社まである国ですし、個人的なボディガードは珍しくありません。しかし、それが自然災害への対抗策である消防に及んだことで注目されました。

 

 「持つ者」と「持たざる者」の違いがますます目立つようになっています。米国の調査会社によると、全世界で62人が36億人分相当の資産を所有しているそうです。一方で、12ドル(220円)以下で生活している人は30億人いる、という推計もあります。こんなに極端でなくとも「イチローの年俸はオバマ大統領の42倍だが、これは正当化できるか」という有名な討論テーマもあります。

 

 経済政策の行き方を極論に分けると、米国で支配的な、個人のレベルに至るまで自由な経済活動を至上として「国家には警察と消防以外いらない」という夜警国家を目指すリバタリアン的な姿勢と、北欧などで主流の国家が社会福祉を中心に所得の再配分を介在する社会主義国家的な姿勢に分けられます。

 

 自由至上主義では、金持ちがお金を使えばそれが社会に広がり、経済が改善するトリクルダウン(おこぼれ)の考えが主流でした。これに沿って富裕層減税が進められました。しかし、金持ちはお金を使わず投機に回しました。その結果、株価は上昇を続け、「持つ者」はますます金持ちに、「持たざる者」はますます貧しくなったと考えられます。

 

 日本はこの中庸を目指してかつては「1億総中流」という状況が出現しました。しかし、その後の政策展開は米国型を志向するようになり、実際は生まれた年や景気変動に左右されているのに、現状だけを見て「自己責任」という言葉で人を切り捨てる国になりました。どんな理由であっても既得権者が勝ちという社会になっていないでしょうか。

 

 世界を見渡すと、米国至上主義のトランプ政権、移民排斥がきっかけとなったブリグジット(英国のEU離脱)、覇権を広げる中国の一帯一路など、孤立主義(私はうまくやっているのだからほっといてくれ)と巨大な覇権主義が拮抗する時代になりつつあります。まず1月に英国がEUを離脱します。ところが残留を希望するスコットランドで独立運動の機運が出ています。スペインでも最大の経済規模のカタロニアが独立を主張しており、欧州では分裂が進むかも知れません。これをロシアが見逃すはずはなく、世界経済の波乱要因になりかねません。また、中国は貸し付けた多額の資金の見返りとしてアジア、アフリカ諸国の港湾などのインフラを押さえ始めており、技術力、軍事力を含めて覇権の進め方が注目されます。香港で起こっていることはこの表れと言えます。

 

 2020年、日本はオリンピックに酔う年になりそうです。しかし、21世紀に入ってからの開催国をみると、ギリシャ以降、これを契機に国としては矛盾を抱え込むようになりました。悪酔いと二日酔いだけが残らないような注意が必要だと思います。

 

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