―ガネーシャの憂鬱― 20200113

 

金融講座40 あなたの仕事は大丈夫か―年の初めに「黒字リストラ」と「人手不足」-

 

 

 

 新年早々厳しめのお話を。日本は深刻な人手不足に見舞われており、中には業務が回らずに倒産する例まで出ています。そんな中で、昨年から大きな変化が生じています。大幅増益の会社でも希望退職を募る例が増えているのです。

 

 19111月の間に早期・希望退職を募った会社(上場企業)は35社、約11,000人となりました。これは前年比約3倍で、1万人を超えたのは6年ぶりです。中にはジャパン・ディスプレイ(1,200人、赤字1094億円)のような大幅業績悪化に伴うものもあります。しかし、圧倒的に多いのは黒字増益基調なのに大量のリストラを行う会社です。

 

 これまでなら業績悪化で部門や人員を整理する例が圧倒的でした。今、俗世間で言われているのは、バブル期に大量採用した人員の整理という話ですが、どうも事情は違うようです。デジタル化リストラです。ICT (Information and Communication Technology)の進化のおかげで大量の人手が余る事態になりました。業績が堅調な間に人手を減らし、企業経営のスリム化を進めようという意図です。社会保険料などの給与外給付を減らす目的もあります。

 

 その一方で、若手には手厚くという姿勢も見えるのですが、IT あるいはAIに絡んだ人材に限られます。特にエレクトロニクス産業では顕著で、NEC3,000人のリストラの一方で、この分野なら新入社員でも年俸1,000万円を提示しています。また、富士通も3,000人近くを削減する一方でデジタル分野の人材には年俸4,000万円までを提示しました。

 

 もうひとつの大きな変化は、大学生もこの流れを意識していることです。東大法学部と言えばかつては高級官僚への登竜門でした。ところが現在の人気企業ベスト10のうち8社がコンサルティング会社、残りの2社は総合商社です。30位までに国家公務員はランキングに入りません。14社までが内外のコンサルティング会社です。おそらく将来の独立やキャリアアップを狙っての就職でしょう。ちなみに製造業は1社だけです。

 

 かつての日本企業は若い時には働きに比べて給料が少なく、年齢の上昇に従って給料が増える年功序列型が中心でした。年功序列、終身雇用、企業内組合が日本企業の「三種の神器」と言われ、欧米でも絶賛された時代がありました。ところが経団連をはじめ、日本の経営者は「日本的経営はもう維持できない」と明言しており、すでに現在のような退職金支払いは無理だ、との兆しが見えています。若い人たちは時間をかけて自助努力するしかありませんが、中高年の方々には突然の方向転換で戸惑う、もっと明確に言えばもっとも生活費が係り、退職を視野に入れなければならない人たちには大変なことになる可能性があります。

 

 話をデジタルに戻しましょう。私がかつて携わった金融アナリストという仕事は現在では「絶滅危惧種」となっています。ディープラーニングで進歩し、ナノセカンドで意思決定するAIには勝てません。こうなると人間の感性とは何か、疑問にすら思えてきます。

 

 年の初めにこれからのあなたの仕事の行く末を考えてみてはいかがでしょうか。あなたはAIと勝負できそうですか。(参考:113日付日本経済新聞1面)

 

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