―ガネーシャの憂鬱― 20200126

 

金融講座41「日本的経営」との決別の後に来るもの

 

 

 

 昨年からトヨタの社長が「もはや日本的経営は維持できない」と繰り返し、今年に入って経団連が同じことを言いだしました。「日本的経営は維持できない」とはどういうことなのか、そして私たちにとってどういう意味を持つのでしょうか。

 

 日本的経営の特徴は「終身雇用」「年功序列」「企業内労働組合」の3つとされています。このうち、企業内労働組合は経営の一部として認識されており健在です。問題となるのは、終身雇用と年功序列です。これがセットになっているため、従業員の年齢が上がれば給与も増える仕組みになっていました。ところが、生産性は年齢と共に上がっていくわけではありません。つまり、若い時は生産性に比較して給与が安く、齢と共に生産性が下がってからも高い給与が上がる仕組みです。ですから若い時に転職すると一生損をするようになっています。

 

 同じものを作り続ける製造業中心の体制なら、これは有効でしょう。ところが、世界最大級のトヨタですらその地位は維持できないという危機の時代を迎えています。トヨタは自動車を作って売るのではなく、移動をサービスとして提供する(MaaS: Mobility as a Service)企業を目指しています。そのためにはAIITなどの技術がカギになり、これは若い世代が中心となって進めるしかありません。つまり給与=生産性という時代になっています。そのためには、まず「日本的経営」という枠組みを外さなければなりません。

 

 給与については、すでに初任給1,000万円という声も出ています。しかし、これは効果がないでしょう。それだけの人材なら、海外へ行けばもっと多額の給与と、何よりも成長の機会が与えられるからです。日本企業は技術的にも劣り、人を育てる気概に欠けています。

 

 もっと深刻な課題を二つ指摘しておきます。ひとつは、退職金がなくなる可能性が高いこと。退職金は給与の後払いという位置づけですが、会社にとっては将来払うべきお金ですから借金と同じ扱いになります。これが企業経営の重しになる、という懸念です。そもそも退職金には一時払いと年金形式がありますが、ほとんどの人は一時払いを選択します。これからはDC(確定拠出年金)のような形式に統一されて行くでしょう。

 

 もうひとつは、年金や医療保険など社会保険です。この多くの半額は企業負担ですが、こうした給与外給付(Fringe Benefit)の負担に耐えられなくなっています。日本の経営者たちは、1970年代の米国自動車産業はこれで失敗したとの認識が刷り込まれており、これを何とか削減したいというのが本音でしょう。つまり、ここでいう「日本的経営を変える」とは、もう給与が払えません、という悲鳴に他なりません。

 

 20代、30代なら早めに自分のキャリアと資産形成を再検討すれば間に合います。問題は時間がない40代、50代でしょう。特にバブル期世代(19651970生まれ)、団塊ジュニア世代(19711974生まれ)にとっては厳しい時代になりそうです。本来なら社会保障をどうするか国家的な課題ですが、残念ながら現時点ではその気配すら見えません。

 

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