―ガネーシャの憂鬱― 220200403 

 

金融講座46 感染拡大阻止と経済回復の二重目的の混乱

 

―なぜ3,600億円の赤字で大企業はつぶれないかー

 

 

 

 

あなたが5,000万円でマンションを買ったとします。ふと広告をみると同じマンションの1室が3,500万円で売り出されていました。さて、あなたは5,000万円の資産を持っているのか、それとも1,500万円の損失を出したのでしょうか。

 

 331日、三菱UFJ銀行が3,600億円の損失見通しを公表しました。それより1週間前には総合商社の丸紅が1,900億円の赤字見通しを発表しています。そんなに大きな損失を出しても会社はつぶれないのでしょうか。

 

 今回の赤字が出た要因は、冒頭のマンションの話に似ています。三菱UFJ銀行は、積極的に買収した東南アジアの銀行の株式が値下がりし、失われた価値を損失として計上しました。これを「減損会計」と言います。新型コロナ・ウイルス感染が株価の低迷と経済活動を制約しているため、これからもこうした形での損失は増えると考えられています。

 

 なぜ、つぶれないのでしょうか。マンションの例で言えば、失業したなどの理由で手放さない限り損失は確定しません。しかし、万が一に備えて「このマンションの価値は3,500万円しかない」と考えておく必要があります。ローンがその額を超えていれば、容易に個人破産に追い込まれます。ものごとを保守的に考えよう、というのが会計の基本です。

 

 会社も同じです。実は、会社の業績は「帳簿で計算した結果ではこうなるはず」という数字なのです。家計なら、お金の動きと家計簿の内容はほぼ一致しているはずです。ところが、会社の場合、特にお金の動きと帳簿とは異なる動きをします。「?」が頭に浮かんだ人はスルーして下さい。ひとつ言えることは、会社は赤字では倒産しない、黒字でも倒産する、金庫に払うべきお金が無くなったら倒産する、ということです。日本企業の6割は赤字決算をしています。この仕組みを教えるだけで、私は90分の授業を15回やります。それほど面倒な話なので、「?」でも気にしないで下さい。

 

 今後、新型コロナ・ウイルスの経済への影響が徐々に明らかになると、大きな問題が発生します。政府は、今回は減損させなくてよいという方針を出しました。しかし、日本の会計規則なら曲げられても、大手企業は米国(SEC)基準や国際会計基準(IFRS)を採用しています。国内的には大丈夫でも、国際的には損失計上を公表しなければならず、企業としての評価は大きく下がることになります。世界はつながっていることを、日本政府は忘れています。

 

 ところで政府の対策ですが、「感染拡大を抑えつつ、経済への打撃を回避する」という二重目的になっており、感染対策に絞る海外との違いが鮮明になっています。二重目的だと、現場はどちらを優先して良いか分からずに混乱するだけです。国民の生命に関わる問題ですから、まずは感染対策に絞る、という方針が正解だと思いますが、どうでしょうか。

 

 米国では国民に13万円、イタリアは30万円の現金を配布する予定です。フランスとスペインでは給与全額、イギリスでは80%を保障する方針を打ち出しています。42日現在、日本で決まったのは「マスク2枚配布」。混乱の結果がこれです。

 

 

 

 

©2020 Yasuaki Kumai, All rights reserved